高血圧

高血圧の基準

収縮期血圧140mmHg以上または拡張期血圧90mmHg以上、どちらか一方でも高ければ高血圧です。           

高血圧を放置すると、日本人では特に脳卒中が多くなることがわかっています。 脳卒中とは脳出血や脳梗塞など脳にダメージを受ける病気のことで、手足に麻痺が生じたり言葉を失ったりと身体に障害を残します。社会復帰も難しく、仕事ができなくなると経済的にも社会的にも失うものが大きくなります。この基準には高血圧を軽く考えないでほしいというメッセージが含まれています。逆に血圧の管理さえ行っていれば、こういった合併症は抑えられます。

2017年にアメリカでは高血圧の基準が従来より10mmHg下がり、130/80mmHg以上と更に厳しくなりました。今までに高血圧と言われていなかった人たちが高血圧といわれるようになったのです。2019年に日本では高血圧ガイドラインが改定されますが、高血圧の基準は従来通り140/90mmHg以上と変わりません。しかし130~139/80~89mmHgを "高値血圧” と高血圧の一つ手前といった表現になっています。また高血圧の治療を受けている方の降圧目標は従来より10mmHg下がり130/80mmHg以下となります。血圧は世界中で厳しく管理する傾向にあります。いずれ日本でも130/80mmHg以上が高血圧の基準になる可能性は高いと思います。

治療開始

血圧が140-160/90-100mmHgとわずかに高い場合(Ⅰ度高血圧)は3か月ほど待ってから降圧剤を開始します。しかしこの間に何もしないで血圧は下がることはありません。塩分を控えめにする、ウオーキングなど運動を始める、肥満のある方は1~2kgでよいのでやせる、など生活習慣を見直すように説明します。特に降圧剤を飲みたくないのであればこういったことを始めなければなりません。それでも血圧が下がらない場合は降圧剤を勧めます。降圧剤を開始すると一生飲み続けなければならないため飲みたくないといわれる方がいます。これは多くの方が生活習慣を改めることができず体質が変わらないためです。しかし中には(10人中1人もいませんが)生活習慣の改善で血圧が下がり降圧剤を中止できる方もいます。降圧剤を始めるときは患者さんが納得するまで待つようにしています。無理やり始めても飲まなかったり自己判断で中止するからです。しかしいつまでも治療をしないで放置するのでなく、3か月をめどに治療を開始し、まずは血圧を下げることを勧めています。

血圧が160/100以上mmHgとかなり高い時は(Ⅱ度Ⅲ度高血圧)であれば、血圧が高いことを心配され来院される方が多いため、すぐ降圧剤を開始しても受け入れは良いようです。

降圧剤を開始しても1剤で目標値まで血圧が下がる方は少なく平均2-3剤必要です。治療抵抗性の場合はさらに多くの降圧剤を組み合わせる必要があります。そんなに多くの薬を飲まないといけないのかという戸惑いの表情をされる方もいます。一つ一つを理解してもらいながら処方を行うように心がけています。

降圧剤の種類とその特徴

降圧剤は主に次の5種類を使い分けしています。

1. カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)2. アンジオテンシⅡ受容体拮抗薬(ARB) 3. アンジオテンシン変換酵素阻害剤(ACE阻害薬) 4. 利尿薬  5. β遮断薬

Ca拮抗剤

降圧作用が強く、副作用も少なくよく使用されている種類です。多くの薬剤がありますが、私が用いるのはニフェジピン、アムロジピン、ベニジピン、シルニジピン、ジルチアゼムの5薬剤が主で、次の特徴を考えながら使い分けをしています。

ニフェジピン:最も降圧効果が強く、他のCa拮抗薬での降圧が不十分なときに使用しています。また血管が痙攣するタイプの狭心症(冠攣縮性狭心症)にも有効です。

アムロジピン:血中濃度が安定し降圧効果が持続しやすいことから、一日一回患者さんの飲みやすい時間帯に服用してもらっています。またARBとの合剤が多いため降圧剤を併用する場合に使用しやすい薬です。副作用として足に浮腫が出やすいことが気になります。また冠攣縮性狭心症には作用が弱いようです。

ベニジピン:冠攣縮性狭心症に有効です。ニフェジピンほど強く血圧は下げたくない時に用いています。

シルニジピン:頻脈の少ないCa拮抗剤です。ニフェジピンやアムロジピンで脈が速くなった、動悸がするといった副作用がある場合にを用いています。また腎保護作用がありますので、尿検査で尿たんぱく陽性であれば用いています。

ジルチアゼム:冠攣縮性狭心症に有効です。降圧効果が弱いので血圧を下げたくない狭心症に用いています。徐脈には注意が必要です。