風邪とは
開業して一番多く来院されるのが”風邪”の患者さんです。ところで風邪って何でしょうが?なんとなく熱っぽくて調子悪いのが風邪でしょうか?
風邪は一般に 鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、熱、倦怠感、といった多くの症状を認めるウイルス性上気道炎” と定義されます。このいろいろな症状(多症状)というのが、いわゆる ”風邪(ウイルス性上気道炎)” の特徴となっています。また ”細菌感染” でなく ”ウイルス感染” ということもポイントです。なぜならウイルスには抗生剤が効きません。抗生剤が効くのは”細菌”だけです。ですから風邪に抗生物質を使用することは意味のない治療となります。しかし、今までに多くの医者が風邪に漠然と抗生剤を処方してきたため、多くの方が風邪には抗生剤が効くと思われています。実際には風邪に抗生物質を用いた場合と用いない場合に治る時間に差がありません。一般にウイルスに有効な薬はありません。身体の中にある免疫力でウイルスがいなくなるのを待つしかありません。薬は症状を軽くするものを飲みますが、ウイルスが残っている間はすっきりとしない状態が続きます。抗生物質飲んだり点滴をすると早く治るように感じるのは ”プラセボ(偽薬)効果” です。治療を受けたということで早く治るという思い込みで、実際には早く治るというデーターはありません。風邪は ”放っておけば治る” というのはある意味正しいのです。
インフルエンザ
風邪の原因となるウイルスにはアデノウイルス、コクサッキーウイルス、RSウイルス、エコーウイルスなどいろいろあります。しかし一般にどのウイルスが原因かまで調べません。ウイルスを同定しても治療方法は変わらないからです。しかし”インフルエンザ”だけは検査します。インフルエンザウイルスも風邪ウイルスの一種ですが、感染力が強く流行するからです。またウイルスですが、抗インフルエンザ薬という有効な薬があるからです。ちなみに抗インフルエンザ薬は抗生物質ではありません。冬になり風邪が流行ってくるとインフルエンザの検査をするのはこのためです。
風邪に似た疾患
風邪症状の多くはウイルス感染ですが1~2割は細菌感染のこともあります。細菌感染の時は ”多症状” でなく ”1カ所の症状が強く出ている” ことが特徴です。喉だけが痛いときは”咽頭炎”や”扁桃炎”、特に溶連菌感染には注意が必要です。鼻水だけが多いときは”急性副鼻腔炎”や”蓄膿症”、咳や痰といった気管支症状が強い時は”市中肺炎””マイコプラズマ肺炎””百日咳”などを疑います。この時は抗生剤を使用します。また咳だけがコンコンと長く続くときは”咳喘息”や”アトピー性咳嗽””逆流性食道炎””など感染症以外の疾患を疑う必要もあります。”風邪は放っておけば治る”、その一方で治療を必要とする風邪に似た疾患があるため正しく診断することが大切です。
風邪が原因でなる重篤な病気
風邪が原因でさらに重篤になる疾患があります。
髄膜炎:脳や脊髄を包んでいる髄膜に感染が広がり、激しい頭痛や高熱が続きます。心筋炎:ウイルスや細菌が心臓まで感染し、急性心不全となり劇症型では死に至ることもあります。急性糸球体腎炎:腎機能が悪化し、血尿や浮腫を認めます。透析が必要になることもあります。ギランバレー症候群:手足が麻痺し動かなくなり、後遺症が残ることもあります。
”風邪は放っておけば治る”、その一方で、ごく稀ですが重篤な病気になることもあります。風邪をひいたときは無理をせず身体を休めることが大切です。