疥癬(ヒゼンダニ)集団発生の経験

疥癬(ヒゼンダニ)の集団発生は病院や高齢者施設などで見られることがありますが、当院のデイケアでも、残念ながら、20239月頃から次々と感染者が発生しました。その感染力の強さに驚き、感染予防策に追われることになりました。 

疥癬は、皮膚症状の軽い通常型疥癬と、皮膚症状の強い角化型疥癬に分類され、特に角化型は感染力が強く隔離を含む対策が必要です。文献を読みながら疥癬について学ぶと同時に、掃除や消毒、リネンの交換、入浴制限などスタッフは感染拡大防止に尽力しました。しかしその後も新たな陽性者が出現したため、私たちは神経質にならざるを得ませんでした。

その中で、2015年の疥癬診療ガイドライン記載されている感染予防対策を読んだ時には、まさしく目から鱗が落ちる思いをしました。です。その一部抜粋します。

「集団内で数か月内に2人以上の疥癬患者が見つかった場合、角化型疥癬を感染源とする集団発生を疑い、角化型疥癬者の発見に努めるべきである。通常型疥癬は感染力が弱いため、集団発生の感染源は角化型疥癬である。しかし、感染源である角化型疥癬は特定が困難な場合も多い。潜伏期が長く、集団発生が認知される頃には、感染源がいなくなっている可能性がある。そのような場合、最初に診断された通常型疥癬患者が間違って感染源とされることがある」

「感染予防策をとっても、疥癬患者を短期間でゼロにすることはできない。なぜなら、集団発生が認知された時点で、既に感染し潜伏期に入っている者が複数いることが多く、誰が潜伏期に入っているかを特定することはほぼ不可能であるからだ。疥癬の潜伏期は長く、潜伏期を抜けて発症する者が出る可能性は数か月にわたるが、発症者を的確に診断し、治療し、角化型への進展を防げば、集団発生は必ず収束する。過剰な感染予防処置を行ってスタッフが疲弊しないようにすることが、集団感染対策の要点である」

私たちは、当院での現象を、皮膚症状の軽い通常型疥癬から次々と感染が広がっていると捉えていました。しかし、実際には角化型疥癬者による、ある時期の集団感染が発生し、潜伏期が長いため、数週間から数か月後に次々と発症が見られたため、新規発症が通常型疥癬者からの感染のように見えるだけであったのです。 また、当院のデイケアでの集団感染の事例を考えると、多くの点でガイドラインに記載されている内容一致していました。つまり必要以上の予防策は不要であり、通常型疥癬に準じて行えば良いことがわかり、気持ちが楽になりました。

11月中旬に最後の陽性者を確認して以来、新たな陽性者は出ていません。20241月、通所リハビリの利用者様と関連事業所に向けて、疥癬が終息したと思われる旨の通知を配布しました。ただし、ご利用者様の安心のため、通常型疥癬に基づいた予防策と利用者様の皮膚観察は、今しばらく継続することにしています。

                                          院長   三好 恵